2014年4月10日木曜日

大震災後の建築基準は?


クライストチャーチ中央図書館の斜め前に建築中の建物があった。


リタイアするまでは建築設計を生業としていたので、建築中の建物を見ると、つい観察してしまう。

この建物は鉄骨構造3階建てで、柱、梁共にH形鋼で構成されている。

外壁のうち、隣地側の2面は、基礎の上にプレキャスト・コンクリート板を建てている。
工場製作のプレキャスト・コンクリート板の高さは3階屋上まである。幅は運搬可能な幅に分割してあるが現場で接合する。


大震災後の建築基準に興味があったので、構造を観察した。


この建物の構造は、奥行き方向は剛接合で間口方向はピン接合となっている。

地震時の水平力(地震が建物を倒そうとする力)に対して、奥行き方向は剛接合なので、柱と梁が水平力を負担するが、間口方向はピン接合なので、柱と梁はほんの少ししか水平力を負担できない。

間口方向の大部分の水平力は奥の外壁が負担する構造になっていた。

日本の耐震基準からはとても考えられない構造に唖然する。

この構造では、建物の重心と剛心が、かけ離れているので、地震時に水平力を受けると建物が捻じり破壊を起こす。
中規模の地震でも大被害を受ける恐れがあり、大地震では倒壊する。

3年前の大地震で日本人28名が犠牲になったビルも、片側の階段室だけが倒壊せず残っていたので、

偏心による捻じり破壊が明白であるが、震災後も改まっていない。

日本では1971年の建築基準法改正で偏心に対する規定が盛り込まれ、1981年の新耐震基準で更に強化された。


NZは2011年2月22日の大震災で尊い犠牲を払ったのだから、もう少し学習効果を出して欲しい。





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